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地球人開発プロジェクト その2 ~ 生命

約5分
地球人開発プロジェクト その2 ~ 生命

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『君はコストの意味を理解しているのか!』
そんな怒号から始まった。

3人目のリーダー着任。
その翌日から、さっそく全グループの進捗会議が
行われることになった。

Businessman giving a presentation to his colleagues

300人を超える「地球人開発プロジェクト」の人員は
15のグループに分かれている。

設計グループは2グループで構成されている。

それぞれ「物理設計グループ」と「精神設計グループ」
と呼ばれている。

奈美は15人で構成されている「物理設計グループ」の
サブリーダーだった。

26歳の若さでは異例の抜擢といっていい。
若い奈美にサブリーダーが務まるのかという陰口を、あちらこちらで耳にした。

しかし奈美なら出来ると確信していたため
特に否定することもしなかった。

物理設計グループの仕事は
地球人の骨格、筋肉、内臓など、物理的な形状や動きを設計する。

動力はどうするのか。
寿命はどのくらいにするか。
繁殖の仕組みはどうするか。

そのあたりも対象となる。

とはいえ1から設計するわけではない。
基本的には我々の体の仕組みを参考にする。

ただし地球とこの星とは環境が違う。

そのため動力については我々のように太陽光と二酸化炭素だけとするわけにはいかない。
またそれに伴い、骨格や筋肉、内臓、特に循環器系の調整も必要になってくる。

いくつかあるこれらの難問を解決する必要がある。
奈美に対する批判は、プロジェクトが進んでいくうちに消えていった。


40年前。
我々は初めて地球に降り立った。

国家を上げての一大プロジェクトであり、
大量の予算が使われた。

太陽を中心に周回している星は無数にあるが
そのうち比較的大きなものを惑星と呼ぶ。

太陽を周回している惑星は8つある。

もっとも近いところを回っている星は水星と呼んでいる。

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気温がちょうど我々の星と似ていたが、
しかし快適過ぎて「異なる環境での生命誕生」というプロジェクトには
適さないという理由で却下となった。

太陽から2番目に近い星は金星と呼んでいる。

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この星は気温が470度程度。
比較的暑い程度であり我々も住めないことはないが
気圧が90もありこれも除外された。
このレベルの気圧に耐えられるような宇宙服の開発はまだできていなかったのだ。

3番目の赤い星は火星と呼ぶ。
適度に”劣悪”な環境であり、実験には最適であった。

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しかし散々議論された挙句になぜか却下となった。
噂では政治力が働いているらしいが、定かではない。

そのような経緯から4番目の星、地球が選ばれたのだ。

真っ青な、まさに地獄のような星だった。

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表面のなんと7割が猛毒である「水」で覆われている。
面白いことに、それらの水を仮にかき集めたとすると、かなり少量となる。
しかし水は水だ。猛毒には変わりない。

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さらに大気はこれまた猛毒の酸素を多分に含んでいた。
その割合、実に20%を超える。
それ以外の大部分は窒素であり78%。
なんと二酸化炭素は0.03%程度である。

そして気温。昼と夜であまり差がなく、マイナス20度から摂氏50度程度の差しかない。

とても生命が生まれるような環境ではないのだが、
現在の我々の科学力で降り立つことができるギリギリの環境であることは確かだ。

最新技術を駆使することになるプロジェクトは、この星で行うことに決まった。


地球の環境についてはあらかじめわかっており、
宇宙服はそれらの劣悪な環境にも対応できるように作られている。

しかし何が起きるかわからない。
全世界が見守るなか、我々の父世代は勇敢にも地球に降り立ったのだった。

そして約1000の探査ロボットを放ち、無事帰還。
世界中は歓喜にした。

探査ロボットから送られてくる情報をもとに
小さな地球を実験室で作り上げるのに5年。

そしてその擬似的な地球を使って、約20年の歳月をかけて
様々な実験を行った。

実験の結果は全世界に公開され、世界中の有能な知性を集結し
「地球人開発計画」、すなわち地球に生命を誕生させる
プロジェクトが始まったのだった。


物理設計グループでは当然、
我々と同じような容姿で設計していた。

腕の数は2本。
足の数は2本。
頭部は1つとし、
エネルギー源となる大気を吸入する入り口は1つとした。

young group of friends sitting on couch eating

しかし地球では我々の星とは比べ物にならないくらいの重力があり
大気と太陽光だけでは、生命を維持するほどのエネルギーを蓄積することができないことがわかっていた。

そこで最大の難問でもあるのだが大気と太陽光以外のエネルギー源を新たに考案する必要があった。

『人間以外にも他の生命を誕生させ、その生命を体内に取り込むことでエネルギーとする』

そんな斬新な発想がある科学者によって提唱された。

つまり我々と似た形状の「人間」と作りだすが、
生命を維持するためのエネルギーが不足するため、
人間以外にも生命を誕生させて、それらの生命を人間に取り込ませてエネルギー源とするのだ。

我々と最も異なっている部分がこの「エネルギーの獲得方法」であった。
それに伴い、消化器系も1から設計し直し、なんとか形にあったのが
つい先日であった。

擬似的な地球上では、その設計で動作することまではわかっていたが
まだまだテストが不足していた。

そこで僕がリーダーとなり、メンバー5人で大量のテストを行ったいた。

そのテスト結果は「大きな問題はない」なのだが、前リーダーはその結果に不服だった。

大量の注文を突き付けられ、再テストを3週間ほどでやることとなった。

そしてその期限が昨日。
新リーダー着任の日だったのだ。

新リーダーの怒号が響いたのは、そんな矢先だった。

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