講師「はい。」
茶木「セミナーはこちらですか?」
講師「あぁ茶木さんですね。」
茶木「あ、はい。あれ?早すぎました?」
講師「いえいえ、大丈夫です。よろしくお願いします。」
茶木「・・・」
講師「 ・・・」
茶木「・・・」
講師「はい!今回はネット集客セミナーにお越しいただき、ありがとうございます。」
茶木「えっと・・・私だけですか?」
講師「そうなんですよね。ネット集客ってホント大変!アッハッハッハ。
では、ネット集客セミナーを始めますね。」
茶木「あ、はい。」
講師「茶木さんは、なんの仕事をなさってるんですか?」
茶木「あ、はい。えっと、小売業です。」
講師「どんな商品を取り扱っているんですか?」
茶木「いろいろなんですが、たとえば軍用ライト・・・」
講師「軍用ライト!?」
茶木「あと、ダイエット薬とか・・・」
講師「ダイエット薬!?」
茶木「「まさか!」と思われる演出でも、
結構 騙されてくれるんですよね。」
講師「ちょ、ちょっと待ってください!
騙すって、あなた・・・!」
茶木「でも最近、売り上げが落ちてきてまして、集客を学びたくて今日来ました。」
講師「ダメですよ!騙したら!」
茶木「まぁいいかなと思って。先祖代々からの仕事なので。」
講師「仕事って言わないです!そういうの。っていうか、先祖代々?」
茶木「はい。言いづらかったのですが、
私の名前、「茶木」は「ちゃき」ではなく「さぎ」って読むのです。」
講師「はぁ・・・サギ・・・。」
茶木「小さいころは、先祖を恨みましたけどね。『間違えやすい漢字にしやがって!』と。」
講師「いや、恨むべき箇所が違うでしょ。」
茶木「でもいまは誇りに思っています。江戸の奴らに感謝です。」
講師「美談にならないですよ、それ。
先祖代々 詐欺の家系なんですか・・・。
っていうか、江戸時代の人のことを”奴ら”って言わない方がいいですよ。」
茶木「ありがとうございます。」
講師「礼儀正しいのはいいんですけどね・・・。」
茶木「はい。もちろんです。
えも・・・お客様への感謝を忘れたら、ビジネスは終わりですから。」
講師「いま、獲物っていいそうになりましたよね。」
茶木「ありがとうございます。」
講師「なんだか、あなたに感謝されると心配になりますね。
さて今日はネット集客セミナーなのですが、facebookはやっていますか?」
茶木「はい、一応毎日更新しています。」
講師「ちょっと見せてもらっていいですか。
あぁいいですね。真面目な人に見えます。」
茶木「そうなんですよね。第一印象が大事ですから、プロフィール写真を工夫しました。」
講師「猫とか犬とか、風景とか、そういうプロフィール写真にしている人が多いのですが、それではfacebook集客は無理です!」
茶木「ですよね。」
講師「自分の顔を出してブランディングするのがfacebook集客の使い方なのです!
恥ずかしがってはいけません!!」
茶木「ですよね。」
講師「そもそもfacebookっていうくらいですから、顔なんですよ。
顔!自分の顔をどんどん出して、覚えてもらうのです。」
茶木「顔を出すのは大事ですよね。」
講師「はい、そうなんです。」
茶木「・・・」
講師「まぁ私のプロフィール写真は猫なんですけどね。」
茶木「ですよね。理由があるんですか?」
講師「恥ずかしくて(*ノω・*)テヘ」
茶木「だから今日のセミナーも私1人なのではないですかね。」
講師「でしょうね。アッハッハッハ!」
茶木「でも私って、詐偽で一年中 人を騙してばかりじゃないですか。」
講師「はっきりいいますね。」
茶木「人目を気にしていたら何もできませんから。」
講師「うーん。ちょっとずれてるような・・・。」
茶木「で、写真の話しなのですが、日本における詐偽界の重鎮がいました。
彼はその後の、詐偽に果敢にチャレンジしていく若者たちのメンターとなっていきました。
知ってますか?金運がアップする黄色い財布。
あれが日本における、新たな詐偽手法の発明だと言われています。」
講師「あぁ、雑誌の最後の方によくあったやつですね。あれ詐偽なんですか?」
茶木「詐偽ですね。財布ごときで金持ちになったら世話ないですよ。」
講師「・・・そうなんだ・・・。」
茶木「買っちゃいました?」
講師「完全に買いましたね。」
茶木「ダメですよ!ちゃんと自分の目で、何が正しいかを判断しないと!」
講師「すいません。物語で書かれるとつい信じてしまって・・・。」
茶木「あんな体験談なんか、全部がねつ造ですよ。いくらでも書けるでしょう。」
講師「でも顔写真があるから、信じてしまって。」
茶木「そう。顔写真があると信頼を得やすいのです。今後は気を付けてくださいね。」
講師「わかりました。」
茶木「しっかりしてくださいよ。黄色い財布だけじゃダメなんですから。」
講師「え?どういうことですか?」
茶木「この緑の財布と一緒に持ち歩くことで、やっと効果が出るんです。」
講師「そうなんですか!?」
茶木「そうです。
こんなことがありました。名前は伏せますが、Aさんという方がいました。」
講師「はい。」
茶木「その人は、黄色い財布を買ったのです。あなたが買った財布と同じものです。」
講師「うんうん!」
茶木「しかし、相変わらず仕事がうまくいかないわけです。そこで、私が教えてあげたのです。緑の財布を」
講師「ほぉー!どうなりました?」
茶木「残念ながら、人生は好転しませんでした。」
講師「え!?ダメじゃないですか!」
茶木「自暴自棄になった彼は、緑の財布を捨てたのです。」
講師「あらー。」
茶木「その直後、なんと1000万円の宝くじがあたったのです!」
講師「えー!なんなんですかそれ!」
茶木「つまり黄色い財布は、いったん緑の財布と出会わせるのです。」
講師「ふむふむ。」
茶木「するとその2つの財布は恋に落ちます。」
講師「恋!?」
茶木「はい。その後に引き離すことで、黄色い財布は寂しくなり、お金を引き寄せるようになるのです。」
講師「なるほど!」
茶木「黄色い財布に寂しさを教えてあげてください。」
講師「わかりました!その緑の財布は、いくらですか?」
茶木「本来は5000億円なのですが、今回特別に20万円で結構です。」
講師「安い!!買います!」
茶木「ありがとうございます。」
講師「やっぱりストーリーで説明されると、わかりやすいし、伝わりやすいですね。びっくりしました。」
茶木「そうなんです。あと、たとえばこれ。どう思いますか?」
講師「どうもこうも、凄い評判じゃないですか!買います!」
茶木「ちょっと待って下さい。これは嘘なのです。」
講師「嘘!?なんでそんなこと言い切れるんですか!」
茶木「いいですか?この名前のところをクリックしてみてください。」
講師「名前・・・。カチッあれ?クリックできない。カチッ。あれ?」
茶木「でしょ。」
講師「カチッカチッあれ?カチッカチッあれ?カチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッカチッ。」
茶木「もういいです。1度ダメなら何度やってもダメなのです。これはfacebookのふりをしているのです。」
講師「カチッカチッカチッカチッ。あ、クリックできた。」
茶木「え?」
講師「嘘です。」
茶木「私を騙すなんて、素質ありますね。このように、ネット上には嘘の体験談で溢れているので気をつけてください。」
講師「おう、わかったよ。」
茶木「私を騙したくらいで、上から目線はやめてください。」
講師「それにしても、こういう詐欺って、なくらないいんですかねぇ。」
茶木「ネット上の詐欺は、年々巧妙になってますからね。」
講師「困ったものですね。」
茶木「ホントですね。」
講師「・・・」
茶木「・・・」
講師「そういえばあなた、同業ですよね?」
茶木「はい。そういう意味で困ったなと。」
講師「あぁライバルとして困ったと。」
茶木「そうなんです。」
講師「もっとまっとうな商売をした方がいいじゃないですか?」
茶木「それは無理ですね。先祖代々ですから。
金剛組とかいう建築業が1400年、山梨にある旅館が1200年。
日本には物凄く昔からある企業が、いまも続いているんです。
誇らしいじゃないですか。」
講師「まぁそうですね。」
茶木「私ども茶木組も、1300年続く、由緒ある詐欺グループなんです。
先人の苦労を、我々も・・・」
講師「あなたのところは、江戸からでしたよね?1300年前となると江戸ではないですよ。」
茶木「そうなんですね。先祖に騙されました。まぁいいや。」
講師「あのですねぇ・・・もっと人のためになる商売をしませんか?」
茶木「なぜですか?」
講師「あなたの詐欺によって、悲しんでる人が大勢いるんです。」
茶木「いるでしょうね。」
講師「なんとも思わないのですか?」
茶木「少しは思います。でも、たとえば道路に軍手が落ちてることありますよね。」
講師「はい。」
茶木「そのくらい気になってます。」
講師「それはかなり気になってないですね。
これを見てください。あなたはその場で儲かって嬉しいかもしれませんが、
その後の相手の気持ちを考えてください。」
茶木「イラスト上手ですね。」
講師「はい。この本の出版記念講演会が札幌であったので、行って来たので。」
茶木「3月14日なんですね。行けるかも。」
講師「ぜひ来てみてください。これがあなたです。」
茶木「似てますね。」
講師「そしてこれが被害者です。」
茶木「お客様ですね。」
講師「いえ、被害者です。あなたが騙している最中はこんなに楽しそうに話を聞いています。」
茶木「はい。私も嬉しくなってきます。」
講師「でもその後、彼がどんなにがっかりするか、想像したことありますか?」
茶木「ないです。道路に落ちている、ぐ」
講師「軍手と同じくらい想像したことないのですね。でも、一度想像してみてください。」
茶木「・・・右手かなぁ。」
講師「軍手のことではなく、被害者のことです。」
茶木「お客様の顔はすぐに忘れるようにしているんです。」
講師「気まずいからでしょう?では私でいいです。緑の財布を買わせたこの私です。イラストで書きます。どうですか?」
講師「このようにあなたは確かに儲かる。そして目の前にいる被害者は嬉しそうにしている。しかしその後の被害者の怒りや悲しさ、悔しさを知ってください。」
茶木「・・・俺が間違っていたのかもしれない。」
講師「わかっていただけましたか?」
茶木「イラストで書かれると、伝わりやすいですね。いま後悔の念が爆風のように押し寄せています。」
講師「もう詐欺はやめましょう。ね?」
茶木「・・・わかりました。」
講師「わかってくれましたか?」
茶木「わかりました。もう”幸せになれる魔法の軍手”を高額で売りつけるのはやめます。」
講師「だから落ちてるのか!怒って捨ててるんですよ。」