「聞く教科書 ~ 1日10分聞くだけで、あなたもIT試験に簡単合格」
そう入力し、「広告申し込みを確定する」をクリックした。
ある人気のIT系メルマガのヘッダー広告枠は1万円だった。
財布には4000円程度しか入っていないが、銀行口座内の自由に使えるお金をかき集めると、なんとかなる広告費だ。
イーバンク銀行からすぐに振込処理を行った。残高欄には502円と書かれている。広告費を払ったいま、自由に使えるお金はこれだけだ。
広告を出すメルマガの読者は1万人。
私が半年前に夢みた「広告収入」で、そのメルマガ発行者は生活している。悔しさを覚えたが、売れるだろうかという期待と不安で、その感情は上書きされた。
広告といっても商品販売ページに誘導することはしなかった。
空論とはいえ一応マーケティングは勉強はしている。直接売り込むのではなく、まずリストを獲得するのだ。
つまり無料サンプルを用意し、メールアドレスを入力してもらう。ドモホルンリンクルなどがやっている「無料お試しセットを郵送する名目で、住所を集める」方法だ。
集まったメールアドレスあてにメルマガを定期的に発行する。メルマガの内容はきちんとしたノウハウとし、たまに商品を売り込む。このような、いわゆる「メールマーケティング」を実践することにしていた。
そのためページは2つ必要となる。
無料サンプルを配るページと、商品販売ページだ。
これらのページは、見よう見まねで作った。ヘッダー部にキャッチなコピーを配置し、リード、本文へと続く。
セクションはサブタイトルで区切り、可読性向上を工夫した。
合格証書の写真を掲載し信頼性を向上。
試験の難易度、試験合格までの学習時間の目安などを配置しいかに商品を買うことでメリットがあるかをアピールした。
商品販売ページの場合には、緊急性の演出も行った。CDは手作業であるため、1週間に10枚程度しか作れないことを明記した。
2005年当時「デザイン性がない、かっこ悪いページの方が売れる」と言われていた。「アンダーグランドな極秘情報の演出」である。まぁそれを意図したわけではないのだが、結果的にデザイン性がゼロのページが完成した。
とはいえ初めてにしてはよく出来たと思った。自然とモチベーションがあがる。『この販売ページ、俺なら欲しくなる!』と。
あと2日もすれば、広告付きのメルマガが配信される。そうなれば多くの人にこのページを見てもらうことになる。
1万人に配信されれば、その10%として1000人くらいは3日間で訪れてくれるだろうか。いや今回は格安のヘッダー広告だ。5%として500人か。
このうち何人が無料サンプルを申し込んでくれるだろうか。そして何人が買ってくれるだろうか。
いままでの人生でもっともワクワクする皮算用であった。
「2006年2月 2万円を稼ぐ」。私は何度も口にした。口にするほど実現に近づいているかのように錯覚することができた。
広告配信は、あと12時間に迫っていた。
(続く・・・)