デジタルプランニング株式会社

マーケティングに新発想を

石田の独立までのストーリー11

約4分

天井はすこし黄ばんできており、所々にシミがある。

目が覚めるといつもその天井が視界に入る。
しかしこの日ばかりは違った。すぐに携帯の液晶画面に目をやった。

12月21日と表示されている。
間違いない。メルマガ広告が掲載される日だ。

昨日は何度も同じ夢を見た。
携帯がブルブルと震える。メールをチェックする。
液晶画面には薄い黒で「売上あり」の文字が浮かんでいる。
「よし」と心の中でつぶやく。

これだけの短い夢を、記憶にある限りで4回は見たであろう。

夢を見るということは、熟睡していない証拠だ。
しかしあまり寝ていないにもかかわらず、興奮で目は冴えていた。

─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─

9時30分
私のもとにもメルマガが届いた。

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申し込んだとおりの広告文が掲載されている。
リンク先も間違いない。

実はちょっとした工夫をしていた。
本来は5行枠なのだが、あえて空行を2つ入れたのだ。
こうすることで3行分の情報しか載せることができないが
見やすくなる。

「何人がリンクを押してくれるだろうか・・・」
私は軽く息を吐いた。

いまこうしている間にもクリックしてくれた人はいるだろう。
いったい何人がクリックしてくれたのだろう。
そして私が作ったページは、どのように写っているだろうか。どこまで読んでくれたのだろう。

後にこのような分析を行えるツールとして
「アクセス解析の達人」「戦略URL」をリリースすることになるのだが
それにはまだ半年先の話である。

─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─

5分後、管理画面を見てみる。

もし申し込みがあったのなら、ここに申し込み者の名前とメールアドレスが表示されることになっているのだ。

しかし昨日見た「申し込みはありません」という無機質な見覚えのある文字が目に飛び込む。
思わず首を傾げる。

10分後、F5キーを押し画面を更新したが、表示に変化はない。
再度首を傾げながら、心の中で「おかしいなぁ・・・」とつぶやく。

直後もう一度キーを押す。わずか数秒で変化があるわけはないのだが、反射的に押してしまったのだ。

しかしその行動は無駄ではなかった。

画面からはなんども目にした「申し込みはありません」という文字は消えていた。
その代わり、知らない人物の名前が表示されていた。

状況を認識するのに時間がかかったが、どうやら1件申し込みがあったようだ。

「お!」と声をあげる。

無料なのだから当然ではあるが、夢に一歩近づいたような感触を覚えた。

自分で考え、そして仕掛けた戦略が結実した瞬間である。

高校時代にはまったドラクエを思い出していた。
ファンファーレとともに、黒背景に白文字で「レベルがあがった!」と表示されている。
その喜びに似ている。しかし大きく違うことが1つあった。それは、これはゲームではなく、現実だということだ。

私は現実にレベルが1つあがったのだ。

─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─ ◇ ─

1行だった申し込み者データは、1時間後には50行になっていた。

その間、なんど「マジか・・・」とつぶやいたか思い出せない。

F5キーを1分ごとに叩き、最新の申し込みリストを表示する。
そのたびに1件~2件増加していた。

「そうなんだぁ・・・」。今度は少し大きめの声でつぶやく。

マーケティングとはこういうことなのだ。書籍で読み、知識だけ身についても意味がない。実際にやってみて、初めて身につくのである。

結局この日は150件程度の請求が発生していた。

とはいえ売上があがったわけではない。無料サンプルの請求が150人程度あっただけのことだ。

次にやるべきことはわかっていた。
この150人にセールスを仕掛けることである。

しかしここで急いではいけない。
まずは私を知ってもらうことと、ノウハウを提供することだ。
このあたりの流れは、facebookでも一緒である。

これを何日か行い、信頼関係が構築できたころにセールスをかける。

私は自作の一斉メール配信ソフトを起動し、お礼のメールを送信した。
心からのお礼の気持ちをそのまま文章にした。

「ありがとうございます・・・」。そう言いながら「送信」ボタンをクリックした。
お礼の気持ちが150人に一斉送信される。

「胸踊る」とはこのことだ。わくわく感を止められず、その日の夜もなかなか寝付けなかった。

12月21日の夜。

この4日後、人生初の売上が生まれることになるのだが、この時はまだ期待よりも不安の方が大きかった。