デジタルプランニング株式会社

マーケティングに新発想を

石田の独立までのストーリー16

約4分

ヒヨコがゆっくりと浮かび上がる。
水面に到達すると同時に、また底まで沈める。

これを10回くらい繰り返したとき、
とんでもないことが起きる。

その「とんでもないこと」とは?


ソフト販売で独立する。

夢のある響きだ。

プログラマにとって「自分で思い通りのソフトを作る」というのは夢なのだ。

なぜなら、ソフトを作るのが好きだからプログラマになっている。
にも関わらず、仕事ではそれができないのだ。

確かにソフトは作っている。
しかしそれは、すでに要望ありきなのだ。
「○○を作ってくれ」と・・・。

もちろんそれはそれで立派な仕事だし、
楽しいこともある。

ただ自分で『こんなソフトがあったら面白いだろうな』とソフトのアイデアを生み出すことは
「プログラミング言語を駆使してパソコンと対話し、ソフトを作り上げる」
よりも圧倒的に「やりたいこと」なのだ。

自分で考えたソフトが多くの人の手にわたる。
そう考えただけでもワクワクしてくる。

しかし・・・本当にそんなことが可能なのだろうか?


『今日は一人で入らせて』

いつもは生後10か月になる息子と風呂に入る。

妻は日中、慣れない育児でストレスがたまっている。
帰宅後くらいは育児を担当することで、多少なりとも
ストレスが軽減される。

ただ今日だけは無理をいって、湯船に一人でつかることにした。

『リラックスするといいアイデアが浮かんでくる。』

そう自分に言い聞かせた。

息子が気に入っているヒヨコのおもちゃを湯船のそこまで沈め、
そして手を離す。

浮力でゆっくりで浮かんでくる。

複雑な形状のヒヨコは、水の抵抗で右左と揺れながら浮上している。

「アイデアが浮かぶ」と「ヒヨコが浮かぶ」を意識のなかで一致させていたのだ。

『ヒヨコが浮かぶたびにアイデアが浮かんでくる』
そんなバカげたことを考えながら、同じ動作を繰り返す。

しかし、実はそれほどバカげた方法でもない。

潜在意識にアクセスし、眠っている知識を結合し、アイデアとなって意識に浮かんでくる。
これがアイデアを思いつくメカニズムだ。

何もないところからポン!とひらめくことはありえない。
すでに持っている部品を組み合わせて、1つの塊を作り上げる。
それがアイデアなのだ。

そのためには勉強が欠かせない。とくに専門外の、一見すると無関係な知識が生きることが多い。

ヒヨコをアイデアに見立てることで、
そのような「アイデア生成処理」が脳のなかで自動化される。

「アイデアよ!生まれろ!」といくら念じてみたところで無理なのだ。

左脳ではなく、右脳を働かせる。
リラックス状態で、潜在意識に処理をまかせることが必要になる。

しかし・・・ヒヨコが10回ほど浮き沈みしたが、
この日はアイデアは浮かぶことはなかった。


2006年4月末。

私はあるソフトの開発に着手していた。
情報処理試験の解説CDの売り上げが下がってきていた時期だ。

そのソフトとは、ショッピングカートである。

いま思うとなんとも恥ずかしい限りの
まったくオリジナリティのない発想だ。

当時、いまほどネットで物を買うことが一般化していなかった。
それは「ショッピングカートを必要としていない」ことを意味する。需要がないのだ。

またネットショップ側に立ってみればすぐにわかるのだが、どこの馬の骨ともわからない人間が作ったショッピングカードなど
買うわけがない。

ショッピングカートは売り上げを左右する大事な仕組みなのだ。
普通に考えて、有名な会社のものを選ぶだろう。

そんなことは考えもしなかった私は、とにかく開発に着手することにした。

『ショッピングカートをバリバリ売って、独立するぞ!』と本気で考えていた。


プログラム言語にはたくさんの種類がある。

WEBアプリを開発するものだけでも
VBスクリプト、PHP、Perl、Rubyなどがある。

このうち私が経験したことがあるのは、当時「VBスクリプト」だけだった。

VBスクリプトは非常に習得がしやすいのだが
動作させることができるレンタルサーバは少なかった。
あったとしても高額なことが多い。

安価な「ロリポップ」などのサーバでも動作させるには
「Perl(パール)」が必須のように思えた。

実際にはPHPも動作可能なのだが、知識がなかった私は
よく耳にしていた「Perl」でショッピングカートを作ることを決めた。

しかし・・・この選択が、最悪の状況へと
私を突き落すことになろうとは、このとき知る由もなかった。

※会社の給料を超える副業収入を手に入れるまで
あと3か月。