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『27か・・・』
手帳を開く。前半はスケジュール帳になっている。
カレンダーの2月2日の欄に『27』と書いた。
この数字は、目標達成期限までの残り日数を示している。
2006年2月。勝負の月だ。
『2006年2月、2万円を稼ぐ』という目標設定はほとんど適当だった。
根拠はない。だいたい10ヶ月後に、だいたい2万円。
しかし10ヶ月という期間は意外に短く、2万円という金額は意外に高く感じた。
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私は疲れ切っていた。慣れない育児、当たり前のように強いられる残業。これらの条件だけも一般的には相当な負担である。
私の場合にはさらに副業が加わっている。
独立起業のためには努力しかない。
いままで学んだことのないスキルを自力で身につけなければならない。
高いレベルでのモチベーション維持が要求される。
モチベーション維持にもっとも効果的なのは「自信」だ。大きな自信を持つことができれば、モチベーションを高く維持できる。
そう考えていた私にとって、2006年2月に2万円を稼ぐという目標は人生の分岐点を意味していた。
1秒後れても駄目、1円足りなくても駄目。
現時点において、これはもっとも厳しい法律なのだ。
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先月までに施策は施していた。
■商品を増やして3つにした
■まとめ買いにより割引するプランを導入
■親近感を増してもらうために、ストーリーとノウハウをメールで配信
■既存客20人くらいには、料金の優遇を行った
あとはセールスメールをきちんと作り込み、定期的に配信する。
原則この流れとした。
売上をあげるための式にはいくつかあるが、
以下の2つはシンプルでありながら効果は絶大だ。
■売上 = 数 × 金額
売上数が少なければ、商品価格を上げる
■売上 = 商品力 × 集客力 × セールス力
商品がよくても集客に失敗すると売れない
集客に成功しても、商品の良さが伝わらないと売れない
これらを頭に入れながら、売上をあげるための戦略を練っていた結果だった。
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そして2月2日。最初の注文があった。
購入点数2本、売上にして5000円。
すでに目標の25%を達成したことになる。
『やった・・・』
子供が寝ていたので、静かにつぶやく。
1本目が売れるとすーっと気持ちが楽になる。
絶対に負けられない野球の試合で、最初に1点獲得したようなものだ。
気持ちに余裕ができると、いろいろなアイデアが生まれる。
そのアイデアはセールス文章としてメールに乗り、
無料サンプル請求者の元に届く。
その成果か、それから3日後に1本売れ、さらに2日後には8000円の高額注文が発生した。
2月10日の深夜。ふと目が覚め、枕元においてある携帯に目をやる。
メール受信を知らせる青白いランプが点滅している。
通常のメールとは色を変えているため、売上通知であることをすぐに認識した。
本文を見る。5000円の注文だ。
そしてそれは、2万円を超えた合図でもあった。
2006年2月10日。期限を18日も残し、目標を達成してしまったのだ。
『本当だろうか?』
深夜にもかかわらず、すぐに携帯電話の電卓機能で再計算を行う。
間違いない。達成している。
それから1時間ほどは興奮して眠れなかった。
翌日からは、まるで誰かが目盛りを調整したかのように、ぐんぐんとモチベーションが上がっていく。
2006年2月28日。結果的に、5万円を超える利益を獲得することができた。
目標を簡単に達成してしまったことによるモチベーションアップは想像以上であった。
『このペースで頑張れば、独立できる!』
そんな確信が生まれていた。
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目標設定の重要性を認識した私は、さらに以下の目標を立てた。
■2006年(この年)7月に10万円を稼ぐ
■2008年4月 独立する
1つ目の目標は比較的容易に思えた。
同じ方法で無料サンプル請求者を増やし、セールスをしかける。
同時に商品点数を増やす。
おそらくこれでいけるだろう。
問題は2つ目、2008年4月の独立だった。
「独立か・・・」
それを意識したとたん、気持ちが重くなった。
いままでは「目指せ!独立起業!」と思いながらも、どこか他人ごとにように感じていた。
しかし不可能だと思った目標を簡単に達成してしまったいま、それは視界に入ってきている。
その瞬間「本当にできるのだろうか」という思いが強くなった。
子供はまだ生後半年。2008年4月には2才になっているだろう。
そんな小さな子供を抱え、果たして食っていけるだけの収入を得ることができるのだろうか?
たしかサラリーマンとは比較にならないくらい高額の年金、保険料、税金などがかかってくるはずだ。
怪我をしたら?病気になったら?
自分は2年後には32歳になっている。起業に失敗したら果たして再就職できるのだろうか?
不安が一気に吹き出してくる。
そして、その不安に追い打ちをかけるような出来事が起きる。
それは『今月も5万円稼ぐぞ!』と意気込んでいた3月中下旬に起きた。
(続く・・・)
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