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来客0人~今日の晩飯もスライムか: 魔法使い養成塾の立ち上げ方 その2

約4分
来客0人~今日の晩飯もスライムか: 魔法使い養成塾の立ち上げ方 その2

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目を軽く閉じ、呪文を大きな声で唱えた。

しょうかんし

 

本当は頭の中で唱える程度でいいのだが、ビジネスというものはアピールも重要だ。

そして目をカッと見開きアニマルゾンビを見据えた。
本当はあまり目に力を入れないほうがいいのだが、これも当然アピールの1つだ。
その方が魔法っぽい。

『メラ!!』

そう叫ぶと同時に、人差し指を敵に向ける。

指先から真っ赤に燃え盛った火の玉がまっすぐに飛んだ。

アニマルゾンビは避ける間もなく一瞬で火だるまになった。

『ギャー!』

モンスターといえども苦しむ姿は見てられない。

普段は目を背けるのだが演出も重要だ。
命に感謝するように、哀れみの眼差しを火だるまに向けた。

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『いやぁ!凄いっす!』

ダーマが興奮気味に話しかけてきた。

『あれがメラですか?』

『まぁそうですね。』

『いやぁ凄い!簡単に出せるんですか?』

『まぁ簡単ですよ。ちょっと練習すれば。』

『だいたいどのくらいで出来るようになるんですか?』

『人によりますけどね。普通はだいたい3週間あれば。』

『3週間!意外とすぐなんですね。魔法使い養成塾、やりましょうよ!』

『ええ、宜しくお願いします。』

我々はガッチリと握手をした。

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・・・思えばあれがピークだった。

いやオレが悪いのだ。
相手が「自分は経営の経験がある」と言っただけでそれを信じてしまったのだから。

ダーマの仕事っぷりは酷いものだった。
とにかくすべてが雑で本当に経験があるのか信じられなかった。

たとえば看板。

それなりに雰囲気が出ていないと怪しいと思われてしまうため、しっかりとした看板職人に依頼しようといいだした。

確かにその通りだ。しかし金がない。

『知り合いの看板屋に依頼しますので、安くなりますよ』

と言っておきながら、気が付くと近くにある普通の看板屋に依頼していた。

知り合いの話はどうなったのかとは聞けずそのままだったのだが、似たようなことが頻発していた。

『知り合いに言えば安い』

結局その知り合いとやらに依頼することはなかった。
知り合いなど本当にいるのか?

疑いが強くなったが、オープンの日は近い。

とにかく目の前にある作業を1つ1つ片付けなければ・・・。


オープン当日。

前の日はなかなか寝付けなかった。

金が底をつき、野宿が続いていたことはもちろんだが、新しいことにチャレンジしているという高揚感が理由だった。

 

時間になった。

『チラシはどのあたりに撒いたんですか?』

何気ない質問を、外を見ながらゆっくりとコーヒーを飲んでいるダーマに投げかけた。

『いや、チラシは撒いてないっす。金がないから。』

『え?じゃあ告知はどうやったんですか?』

『3日くらい前から、外に看板を建てたんですよ。見なかったですか?』

『いや、それは知ってます。
8月8日オープンと書かれたやつですよね?・・・告知ってアレだけですか?』

『まぁそうですね。金がないし・・・。』

頭に血が登ってくるのが体感できた。首から上だけが熱い。

『いや、ここって人が全然通らない場所ですよね?
そのオープンを知らせる看板なんて誰も見ていないでしょう?』

『まぁでもオレの知り合いが、声をかけてくれるっていってたんで。』

『知り合いって誰ですか?』

『昔からの仲間で、いま宿屋をやってるんですよ。』

『じゃあその宿屋さんにチラシを置いてもらってるんですよね?』

『チラシはないですって。金がないんだから。』

話にならない。とにかく会話を打ち切りドアが開くのを待った。

オープン初日だ。もしかしたら話題が話題を呼び、生徒が押しかけるかもしれない。

しかしそれは淡い期待に終わった。

ゼロ。

それがオープン初日の来客数だった。

(続く・・・)

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