1月10日。
札幌駅高架下に私はいた。
サンマルクカフェ。
私はそこで「フェルマーの最終定理」の本を読んでいた。
ちょうど、海外旅行に小説を持っていき、プールサイドでかっこよく読書をしているが、まったく頭に入ってきていないように。
意識は紀伊国屋書店のビジネス書部門にあった。
『うまくいくだろうか・・・』
1月15日。今週の日曜日。
札幌のエルプラザで、樺沢さんの出版記念講演会が開催される。
新刊「ムダにならない勉強法」の出版記念講演会だ。
過去に23冊出版し、テレビ出演も何度も経験している樺沢さんの講演会だ。
参加者全員に新刊がプレゼントされるのだが
その本を紀伊国屋書店の札幌本店に発注していた。
札幌本店といえば北海道最大の書店。
そこに200冊を発注していた。
これだけ発注すると、書店側でも特別扱いしてくれるのではないか?
そう期待して、お願いすることにした。
それは「特設スペースを作り、チラシを置いてもらえないだろうか」ということだ。
しかし本当にそんなことが可能なのだろうか?
著者が直接お願いすればまだしも
その出版記念講演会の主催が話したところで可能なのか?
とはいえ考えても仕方がない。
1月9日(祝・月)に紀伊国屋書店に電話をした。
樺沢さんから担当の名前は聞いていた。
Kさんといった。
「あいにく明日の午後に出社します」
なるほど。祝日は出社していないわけか。
明日の午後まで待つとしよう。
1月10日(火)。
確か「午後」と言っていた。
それにあわせて札幌駅に向かうとしよう。
そうだ少し早めに行き、別の書店に並んでいるところを撮影してみようか。
それがコレ。
ステラプレイスの三省堂。かなり大きな書店だ。
あった!
それはそれとして、その横の「顔を見れば9割わかる」という本も気になるところだ。
え?1404円!?
随分と中途半端な金額だ。4円がどうしても欲しかったのだろうか。
確かにチリも積もれば山となるが・・・1404円・・・。
それはいいとして三省堂書店には、さすがに置いてあるか。そうだろうな。
その後、アピアにある小さな名も知れない書店に寄ってみた。
ここにもあった。
その横の「人間は9タイプ」も気になるところだ。
価格はどうだ!?
1620円。よしよしこれが普通だろう。
それにしても「顔を見れば9割わかる」と「人間は9タイプ」の横とは。
よほど9に縁があるらしい。
紀伊国屋書店でも、まさか9の隣なのか?
私はドキドキしながら、紀伊国屋書店 札幌本店に向かうのだった。
私は読書が好きだ。
自慢じゃないが、年に70~100冊読んでいる。
この前自宅の書棚にある本を数えたら509冊あった。
ちょっと前にかなり処分したはずだが
それでもまだ500冊を超えている。
ただしそのカウントは、7歳の次男が
なぜか一生懸命にこなしていたため、多少の間違いがあるかもしれない。
ともあれそれくらいの冊数があり、また日々増えていっている。
だから紀伊国屋書店の札幌本店は
ハッキリ言ってディズニーランドよりもワクワクする場所だ。
ワクワクを抑えながら紀伊国屋 札幌本店のゲートをくぐるのだった。
ディズニーランドと違い、入場は無料。良心的だ。
おっとどこに行けばいいのか?そうだ、ビジネス書担当のKさんだった。
札幌本店のビジネス書は2階にある。
1階の端に、まるで、漫画ばかり読んでいるサラリーマンをあざ笑うかのように佇んでいるエスカレーターに乗り、漫画をほとんど読まないかのような佇まいで2階へと向かった。
実際にはいまだに昔のドラゴンボールやジョジョや刃牙は読むのだが、それを悟られないように、大人の顔で向かった。
そこであることに気がついた。
「確か午後って言っていた・・・」
iPhoneの時計を見ると、12:30を示していた。
午後ということは、普通は13時以降をいう。Kさんはゆっくりと食事をしているのかもしれない。
実は私のなかでKさんのイメージが出来上がっていた。
おそらく35歳。妻子ありの男性。
学生時代は本を読んだことはなかったが、病気がちの母に仕送りするために出世を目指したことがきっかけで読書に目覚める。
その後、母は元気になり、スナックをオープン。
事業は順調に進んでいたため、仕送りをストップ。
浮いたお金を本にあて、さらに読書量が増すことに。
「そんなに本が好きなら、本屋にでもなればいいのに」と友達からからかわれたが、それを真に受け、紀伊国屋に就職。
その後、道内の紀伊国屋のスタッフが集まる勉強会で、「紀伊国屋 旭川店」の副店長”あけみ”と知り合い、2年と3ヶ月で結婚。
現在は2児の父で、夏には第三子が生まれる。
乗りに乗った人生を歩んでいる真っ最中。
これがKさんの生い立ちだろう。まず間違いない。
そんなKさんは、毎日 愛妻弁当を同僚と食べるのが最大の楽しみだろうから、それを邪魔しては悪い。
私はそう思って、紀伊国屋書店 札幌本店を後にした。
向かったのは道路を挟んで向かいにあるサンマルクカフェだ。
そこで昼食をとっていないことに気が付き、「チョコクロ」と「じゃがバターデニッシュ」と「ブレンドコーヒー」を注文。
読みかけの「フェルマーの定理」を読みながらのカフェ兼ランチは最高だった。
いや嘘だ。
これから起こる、それはそれは難解で緊張感溢れる交渉のことを考えると、とても読書どころではなかった。
そのためせっかくの本も、同じ部分を何度も読み返し、結局は4ページしか進まなかった。
結局、志村と谷山、どっちがどっちだっけ?
紀伊国屋書店、札幌本店の門を再度くぐった。
※ちなみに先程から「札幌本店」としつこく書いている理由は、私のサイトを札幌の人に多く見て欲しいための、いわゆるSEO対策からだ。
1階の端にあるエレベーターは、漫画ばかり読んでいるサラリーマンをあざ笑うかのごとく(以下略)。
2階にあがってすぐのところにレジがある。
たまたま空いていたため、1人の女性に声をかけた。
「石田といいますが、Kさんいらっしゃいますか?」
「Kはまだ出社していません」
「あ、そうなんですか・・・午後には出社すると聞いていたのですが、少し待ってみます。」
「一応、探してみます。」
そういって笑顔が素敵な女性は姿を消していった。
それから5分後。いろいろな思いが頭を駆け巡った。
「は?特設スペース?無理に決まってるでしょ(・∀・)ニヤニヤ」
と侮蔑の笑みを浮かべられること。
「ムダになら・・・え?なんですかその本。200冊?発注を受けてませんが・・・」
ととぼけられること。
「あのねぁあなた。人にモノを頼むのなら、頼み方ってものがあるでしょ。え?わからない?ド・ゲ・ザって知ってる?ジャパニーズ・ドゲザ。知らない?外人?」
とバカにされること。
いやもしかしたら出社していないのかも。午後出社というのは嘘だったのか?
いやそもそも、Kなんて存在しないのかもしれない。
そんなネガティブな思いが前頭葉から海馬、大脳皮質、小脳までを占めて全身に脱力感が立ち込めたころ、先ほどの女性がさらに満面の笑みで戻ってきた。
その後ろにはさらに女性が連なっている。
「Kです。」
あれ?女性?
K像が私のなかでガラガラと音を立てて崩れていった。
あけみは架空の人物だったのか・・・。
そしてあけみは・・・違ったKに用件を伝えた。
「15日に出版記念講演会を主催するのですが、こちらに200冊、書籍を発注しているはずです。」
「あ、はい。存じております。」
存じていたか。よかった。
「それで・・・できれば・・・と・と・と・特設スペースでも作ってくれると、う・う・う・う・う・嬉しいのですが・・・」
私は土下座をする準備をしていた。
呼吸を整え、重心を下げる。
左足を軽く引き、瞬発力を発揮できる体勢をとる。
視線を下げ、顎を引いた。
いまだ!土下座を!
しかしK女史の口から出たのは、以外な言葉だった。
「はい、わかりました。」
私は思わずつぶやいた。
やはりここはディズニーランド。夢の国だ。
30分後、特設スペースが作られていた。
隣には9ではなく1000の文字。
さすがは紀伊国屋書店 札幌本店だ。
こんなにも目立つ位置に配置してくれるとは、ありがたい。
「よし!何か本でも買って帰ろう!」
ワクワクしながら店内を回る。
歴史の本
マインドの本
マーケティングの本
ムダにならない勉強法・・・
え?「ムダにならない勉強法」?
なんと!さきほどの特設スペースとは別に、こんなにも素晴らしいスペースが確保されていたのだ。
しかもレジのすぐそばの目立ちところに!
特設スペースが2箇所。なんという大盤振る舞いだろうか。
パッと見、20冊近くあるようだった。
どうやら出版社であるサンマークがあらかじめ連絡をしていたらしい。
さすが超大手。マーケティング力が違う!
私も本を出したいので、よろしく!
福住にいた。もうすぐ自宅だ。
その時、大変なことを思い出した。
「あ!」
・・・ド、ドメイン!!
そう!実はとてもとても知りたいことがあり、ある仕掛けをしていたのだ。
それは、特設スペースに置いたチラシから
いったい何人の人がランディングページに来たのかを知りたかったために
それを計測できるようにしたのだ。
具体的には、書店に配置したチラシだけは
別のURLを記載しておくことで、
何人が”チラシに書かれているURLを入力したのか”が分かる仕組みだ。
これは物凄いノウハウになる。楽しみだった。
しかし・・・肝心のそのドメインだが、まだ未入金であることを思い出したのだ。
つまり未稼働なURLなのだ。
現に自宅に戻りパソコンのブラウザで打ってみるとこんなエラーが堂々と・・・
それはもう堂々を我が物顔でディスプレイ上を占拠していた。
慌てて支払い、すぐに設定。
なんとか2時間後にはつながるようになった。
これで、書店に配置したチラシから、何人の人がランディングページに来たのかが把握できる。
5か?20か?50か?
いや案外ゼロなのかもしれない・・・。
まったく予想がつかない。そんなデータ、持っている人なんていないだろう。
計測できたら公開しよう。そう心に決め、眠りについたのだった
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が、まだ夕方なので寝られなかったので、このプロモーション動画を作った。
(完)