━第1話(全3話)━━━━━━━━━━━━━━━━━━
知ったかぶりの無能な上司に
『”プロダクトローンチ”で
3か月以内に売り上げ3倍にしろ』
と、いつものムカつく調子で命令されたとしたら・・・?
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いま流行の「プロダクトローンチ」について
誰かから聞きかじっただけの上司が
さっそく取りれろと!いつもの調子で命令してきた。
ホントにわかっているのか?怪しいもんだ。
そもそもITマーケティング事業部の部長でありながら
たぶんマーケティングについて、何も知らないだろう・・・。
もちろん”IT”についても。
”何もわかっていないであろう上司にされた命令を
その上司自身からの妨害工作をかわしながら遂行する”
そんな”多かれ少なかれ誰にでも似たような
経験をしているであろう”ストーリー。
全3話。
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『おい!ちょっと来い』
小太りの男は、眼鏡をふきながら
いつもの調子で部下を呼びつける。
呼びつけた相手は、
あと2ヶ月で30歳になろうとしている女性。
彼女は入社してすぐに配属された
『ITマーケティング事業部』の上司とは気が合わなかった。
「はい・・・」
心の中で大きなため息をつく。
30人程度のレジャー用品の卸売り業。
採用は面接の終わりに通知された。
通常は手紙で採用/不採用を知らせるのだが、
どうやら気に入られたらしい。
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『うちの会社も海外のマーケティングを取り入れていくぞ。』
ちょっと聞きかじっただけで知って気になり
すぐに取り入れようとする。
それを自分では「行動力がある」と思っているようだが
振り回される人間にすればたまったものではない。
失敗した場合の責任をとるのならまだしも
そんな様子もない。
”単にお偉いさんに取り入るのが上手いだけで
他には何もできない”
それが彼女が下した、彼への評価だった。
『プロダクトローンチって知ってるか?』
『はい』
あのApple社が新商品リリースの際に使ったマーケティング手法だ。
商品リリースの前から期待感を煽り
お祭り騒ぎを演出。まさにAppleの代名詞といってもいいような手法。
発売と同時にドカンと売上をあげることができる。
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憂鬱だった。
「プロダクトローンチ」自体はやってみたい方法だった。
未知の分野にチャレンジするのはワクワクする。
気がかりなのは、命令した上司が
なんのつもりかたびたび邪魔をすることだった。
ついこの前も『おい!』と呼びつけ
『facebookでマーケティングしかけるぞ』
と命令したくせに、facebookページのファンが1万人に達したところで
『まったく反応がないじゃないか!』と突然閉鎖してしまったのだ。
メルマガ1万人と同じレベルの反応を期待していたらしい。
メルマガ1万人とfacebookページの1万人とでは
比較しても無意味なのだが・・・。
今回もそんなことにはならないだろうか・・・。
彼女は大きな不安を抱えていた。
”事前に盛り上げる。祭りのように!”
これが実現できればfacebook時代において
マーケティングは成功する。
ワクワクがどんどん伝染し、どんどんと
アクセスが呼べる。
そしてアクセスしてくれた人には
”要望”や”意見”、”感想”をいただき
「プロジェクトに参加している」と感じてもらう。
”商品販売以前からプロジェクトに参加している”
ことで、実際にリリースしたタイミングでは
かなり積極的に紹介してくれるだろうし
もちろん買ってくれるだろう。
問題は・・・そんな戦略を
上司が許してくれるかだが・・・。
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『はぁ?お前わかってるのか?』
いつもの調子で、目も合わせずに話続ける。
『c
無料メルマガでアフィリエイト報酬をあげるんだよ!』
この”一部を見ただけですべてを判断する”のも
いつものことだ。
『いいか!?たとえばメルマガ購読したら何かをあげるんだ。
無料レポートでいいだろう。そして、その無料レポートを
アフィリエイトしてもらうんだ。アフィリエイト報酬は
そうだなぁ・・・1000円。うん、1000円にしよう。』
確かにプロダクトローンチにおいて、
そのようなことをしている人はいる。
しかしそれがイコール”プロダクトローンチ”ではないのだが・・・。
『無料レポートの内容?そんなもの・・・カタログか何かでいいだろう。』
は!?カタログ?
『営業部に言えば、なんかあるだろう。わかったな。』
はい、とだけ答え、私は席に戻った。
当然そんな上手く行くわけない。
カタログ請求ごとに1000円のアフィリエイト報酬。
それ自体は昔からあるような仕掛けだろう。
しかし果たしてそんな単純な仕組みで
facebookを使った拡散が期待できるのだろうか?
答えはわかっていた。NOだ。
訪問者をプロジェクトに巻き込むための戦略を
上司の許可を得ずに行なうことにした。
問題ない。この上司は・・・インターネットのやりかたも
ろくにわからない。バレることはないだろう・・・。